別れ

シーズン開幕まで、あと2日。
各チームは、登録選手を15人に絞らなければなりません。
毎日、~がカットされた、という核チームのニュースが流れます。

まず、前回の続きから書くと、

ニックスのTraining campーPreseasonには、ヨーロッパでのプロ経験を経た、名門スタンフォード大出身の選手がロスター入りをかけて参加していました。
スタンフォード大の三年生時には、平均得点17点、3PFG%は40%以上という立派な成績を残しています。(カレッジの17点は、NBAでの25点相当にあたる気がします)
けして身体能力が高いわけではありませんが、頭を使ったプレーと、的確なアウトサイドショットが持ち味で、日本人のお手本になる選手だな、と思ってみていました。
スタンフォードで、バスケットボールだけでなく学業面でも立派な成績を残した彼は、ESPNのAcademic Honorも受賞しています。
物凄く礼儀正しい青年で、練習態度も素晴らしく、誰からも好かれていました。
自分にとっても、家族の事から、お互いの恋人のことまで、一番よく話をしていた選手です。
彼が解雇を言い渡されたのは、プレシーズンゲームの最後の2試合目、遠征先のNJ。
後から知りましたが、彼が解雇を言い渡されたのは試合前だったようです。
そして、最後の最後でコーチにチャンスを与えられて、数分間だけNBAのコートに立ちました。
リバウンドが仕事の選手ではないけれど、必死でリバウンドに飛び込むその姿、
絶対に間に合わない、相手のスリーポイントへのチェックに必死で距離を詰める鬼気迫る表情。
唯一得た、2本のフリースローは、両方とも外してしまいました。
彼は初めてNBAのコートに立ってプレーをしているとき、これが最後だと知っていました。
そのプレッシャーが、彼の正確なシュートを狂わせたのでしょう。
翌日、自分を含め、多くの人が彼の解雇を知ったときには、彼はもう練習施設には現れませんでした。
チームメイトやスタッフに、気を遣わせまい、という彼らしい心遣いをしたのだと、勝手に思っています。
電話をかけて、別れを言う事もできましたが、彼の決断を尊重したくて、やめました。
別れが言えなかった分、彼のこの先のキャリアの武運を祈ります。

そして今日。
最後の一人が解雇を言い渡されたようです。
自分は、さっきチームのHPで確認しました。
ドラフトされた順位は2順目と特別大きな評価は受けていませんでしたが、素晴らしい身体能力とそれを活かしたディフェンスが持ち味で、練習でも見事なブロックショットをみせ、何度もダンクを叩き込んでいました。
先日の最後のホームでのプレシーズンゲームでは、20点差をつけられた第4Qに登場し、2本のダンクを含む、放ったFGを全て決め、1点差まで詰め寄る立役者となる活躍をみせました。
彼はニューヨークにとって特別な存在であり、とてつもないプレッシャーを身に受けていましたが、プレーでそのプレッシャーを、歓声に変えました。

彼のトリートメントは自分がほぼ任されていたので、話す機会も多かったです。
自分の作るアイスバッグを、the coldest icebag everと、嫌がりながらも毎回毎回褒めてくれました。
アウトサイドのシュートに改善の余地がある彼のシューティングを個人的に手伝う事もあり、自分も一つ一つ、それこそ魂を込めてパスを出しました。
自分の出すパスがいい、という事をコーチ陣に話してくれたり、アイスバッグのことをトレーナー陣や他の選手に話してくれたりしてくれたりと、自分が周囲に認めてもらえる橋渡しをしてくれました。

彼には、お別れが言えるでしょうか。
さよなら、と それ以上に、「ありがとう」といいたい。
もう彼のトリートメントをする事も、シューティングを手伝う事もできない。
ビジネスとはいえ、簡単には割り切れません。

彼の解雇に対するKnicksファンの怒りは、既にもの凄いことになっています。
先日のゲームでの彼の活躍も、それに油を注いでいます。

彼がニックスのユニフォームを纏った、最後のダンク。
ESPNのトップ1にも選ばれた、彼の魂のこもった一撃。


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by u2k_maru | 2008-10-28 13:17 | Knicks
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